残念系お嬢様の日常
「で、わざわざ僕のところに彼を連れてきたってことはなにか理由があるんだよな」
学年が違うから会うことがないのかと思ったけれど、彼にも事情がありそうだ。
「普段からここに?」
「ん? あー、まあそんなとこ。できれば他言無用で。広まると面倒だしね」
俺と姉さんにもいろいろと事情があるように、桐生兄弟にもなにかあるのだろう。
それはきっと俺が踏み込むことではない。
俺自身もなぜ彼女たちにここまで連れてこられたのかわからなかった。
「作戦会議よ! 真莉亜を守るためにね!」
水谷川さんは仁王立ちをして、声高らかに言い放った。
「しっかし、噂の力はすごいなー。今じゃ知らない学生いないんじゃないの」
「けーくん。引きこもっていて、そんなことどうやってわかるんだ?」
「引きこもってるって言うな。僕だってこの学院内に知り合いが全くいないわけじゃないから、噂くらい耳に入るよ」
桐生景人は東雲さんのうさぎのパペットを手でぐしゃりと掴む。
必死に救出しようとしている東雲さんを尻目に「そろそろだな」と呟いた。