残念系お嬢様の日常
毒を以て毒を制する
庭園を出て校舎の中に入っていった彼女の後を追う。
階段を登っているその背中に声をかける。
「少しいいかしら」
振り返った彼女は不服そうに眉を顰めた。
いい反応をされないことくらい予想はついていたけれど、あからさまに嫌そうだ。
「……なにか用」
一段一段近づいていく。そっと胸元の薔薇のブローチに触れて、念のため録音開始。
「私と蒼のことを流したのは貴方で合っているかしら」
「証拠なんてないわ」
一応あるといえばあるけれど、雨宮から中等部の子が彼女の命令でやったって吐いたと聞いたし。
それにさっきの言動で十分怪しいわよ。
動揺していたのは明らかだし、このタイミングで揺さぶるのが一番だ。