残念系お嬢様の日常


歩いていると目に留まったのは大きな桜の木。

ちょうど今が満開だ。鼻歌交じりに歩み寄り、はらはらと落ちてきた桜の花びらをキャッチしようと全身を使って追いかける。

前世では、桜の花びらが地面に落ちるまでにキャッチできたらいいことがあるって友達同士の間で広まっていて、小学生の頃は春になると桜キャッチが流行ってたんだよね。


おっと! よっと! ほらよっとっ!

懸命に追いかけて、滑り込むように手を伸ばして、しゃがむ。ようやくキャッチできたと思ったら、桜の幹の裏側に人がいることに今更ながら気付いてしまった。

反対側からやってきたとき、ちょうど隠れていて姿が見えなかったんだ。やばい、これは非常にやばい。だって、この人は……。


「いちごちゃん」

「ひっ!?」

あろうことか私を〝いちごちゃん〟と呼んできたのは、ミルクティブラウンの髪をした甘ったるい容姿の男ーーーー雨宮譲だった。

というか〝いちごちゃん〟ってあれだよね! 私のパンツがこんにちはしたときのことからきてるよね!




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