残念系お嬢様の日常
「こそこそと近づいて、婚約者だっているのにっ! 彼を誑かして楽しいの!?」
英美李様が私の胸ぐらを掴みあげる。
お嬢様だけど案外過激で力もお強い。
力なら鍛えている私も負けてはいないけれど、階段は危険すぎる。とりあえず場所を変えて話せばよかった。
「もう天花寺様に近づかないで! せっかく花ノ姫でも立場を危うくできたのと思ったのに……!」
「お、落ち着いて、英美李様」
「あんたなんて大嫌いよ!!」
面と向かって睨みつけられながらはっきりと告げられる〝大嫌い〟という言葉は容赦なく私に突き刺さる。
同じ花ノ姫でもスミレたちみたいに特別親しいわけではない。
けれど、初等部の頃からずっと私たちは顔を合わせてきて、それなりに付き合いも長いので改めて言われてしまうとショックは受ける。