残念系お嬢様の日常
みんなに好かれるなんて無理な話だってわかっているけど、周りにどう思われても構わないなんて強い心があるわけでもない。
————ああ、でも私にも彼女に対して許せないことがあった。
「離れてください」
背後から聞こえてきた声に慌てて首を少し捻って振り返る。
「……私に指図する気?」
私の胸ぐらを掴んでいる英美李様の手にわずかに力がこもったように感じた。
彼————いや、彼女の登場は英美李様にとっては不愉快なものなのだろう。
「浅海くん……どうしてここに」
「ふたりを見かけたので心配で後を追ってきました。勝手にすみません」
私と英美李様を見かけただけで浅海さんが後を追ってくるなんて違和感を覚えた。
それに浅海くんからは明らかに英美李様への敵意のようなものがあるように見える。
「これ以上、雲類鷲さんに危害を加えるようなことをしないでください」