残念系お嬢様の日常
「っうるさい! 庶民は黙っていなさい!」
「どうして天花寺さんたちの傍にいるのが自分じゃなくて、雲類鷲さんなのかまだわからないんですか?」
あまり感情を表に出さない浅海さんが怒りを露わにし、あの英美李様に食ってかかっている。
英美李様も自分に刃向かってくるのが気にくわないようで、眉根を寄せて憤然としている。
「……なにが言いたいのよ」
「人の価値を家柄で決めるような女性に誰も心惹かれたりなんてしませんよ」
「うるさいうるさいうるさいっ!! お前なんかになにがわかるのよ! 私はずっと! ずっと想っていたのに!!」
激昂し叫ぶように声をあげる英美李様は普段のお嬢様である姿とは違い、まるでだだをこねる子どものようだった。
けれど、英美李様の勢いはすぐに萎んでいき、私の胸ぐらを掴んでいた手を離した。
その手は微かに震えていて、英美李様の瞳には私ではなく別の人物が映っている。
「俺の好きな子にそういうことしないで」