残念系お嬢様の日常


浅海さんではない声に、振り返らなくても誰かわかった。

それは英美李様にとってはとても残酷な結末。



「て、天花寺様……」

今にも泣き出しそうな英美李様が消えそうな声で呟く。

ああ、やっぱりと思いながら、ゆっくりと振り返った。


浅海さんの隣に立つ天花寺は普段の穏やかな表情ではなく、とても冷たい視線を英美李様に向けている。



「雲類鷲さん、ごめん。俺が元凶で今まで嫌がらせを受けていたんだね」

この絶妙なタイミングはおそらく偶然ではないだろう。

きっと天花寺も浅海さんも、瞳とスミレも英美李様を疑っていた。


だからこそ、花会で英美李様を疑うような発言をして、こうして後をつけてきたんだ。


どうして彼らが英美李様を疑っていたのかなんてわからないけれど。




「天花寺様、ち、違うんです、これは……」

この後に及んで必死に言い訳をしようとする英美李様に天花寺が首を横に振る。





< 546 / 653 >

この作品をシェア

pagetop