残念系お嬢様の日常
「全部聞いたから。もう言い訳とかいらないよ」
「ぁ……いや……違います、私、私は……っ」
乱れた制服を正しながら、泣き出す英美李様を見遣った。
気の毒だとは思うけれど、自業自得だとも思う。
それほどまでに天花寺が好きだというのなら、彼女は確実にやり方を間違えていた。
けれど、きっかけを与えた誰かがいるのでしょうけど。
「俺は君のことは好きにはなれないよ。もう好きな人がいるから。だから、ごめんね。もう俺にも彼女たちにも必要以上に近づかないでほしい」
「ぁ、ぁああああぁあああっ」
天花寺の言葉が決め手となったようで英美李様がその場に泣き崩れる。
好きな人からの明らかな拒絶。彼女の恋は叶うことはない。
「雲類鷲さん、大丈夫?」
「お二人とも、ありがとうございました」
こちらに寄ってこようとする天花寺を制して、にっこりと微笑む。
浅海さんにも天花寺にも聞きたいことは色々とあるけれど、今は先に弱っている彼女に聞くべきことを聞いてしまいたい。
「少し彼女と二人きりにしていただけますか」
「でも」
「大丈夫です。近くの部屋で数分話をするだけですわ」