残念系お嬢様の日常
英美李様の目の前に見下ろすように立つ。
できるだけ顔を作っているけれど、私の小さな心臓は小刻みに震えている。
雅様のときもだったけれど、強気を作るのも苦労するわ。
「貴女に私と蒼の件を伝えて、先ほどの写真を渡したのは誰」
こういうときは私の悪役顔は役に立つのだろう。
目が合った英美李様が一瞬怯んだように見えた。
すぐに顔を背けて、弱々しい声で反発してくる。
「……言いたくないわ」
あっさりと吐くかと思ったけれど、もう一押しするしかないみたいね。
どうせ嫌われているんだ。
それならとことんやってやろうじゃない。
私のか弱い心臓、頑張って。
チキンハートファイッ!
「言いなさい。言わないのなら、明日には貴女を花ノ姫から除名するわ」
「な、なに言ってるのよ! そんなことできるはずがないわ!」
「できるわよ」
英美李様の顎に手を添えて、強引にこちらを向かせる。
そして、わざとらしい作り笑いを浮かべて、囁くように言った。
「私を誰だと思っているの?」