残念系お嬢様の日常


英美李様の目の前に見下ろすように立つ。

できるだけ顔を作っているけれど、私の小さな心臓は小刻みに震えている。

雅様のときもだったけれど、強気を作るのも苦労するわ。



「貴女に私と蒼の件を伝えて、先ほどの写真を渡したのは誰」

こういうときは私の悪役顔は役に立つのだろう。

目が合った英美李様が一瞬怯んだように見えた。


すぐに顔を背けて、弱々しい声で反発してくる。



「……言いたくないわ」

あっさりと吐くかと思ったけれど、もう一押しするしかないみたいね。

どうせ嫌われているんだ。

それならとことんやってやろうじゃない。

私のか弱い心臓、頑張って。

チキンハートファイッ!


「言いなさい。言わないのなら、明日には貴女を花ノ姫から除名するわ」

「な、なに言ってるのよ! そんなことできるはずがないわ!」

「できるわよ」

英美李様の顎に手を添えて、強引にこちらを向かせる。

そして、わざとらしい作り笑いを浮かべて、囁くように言った。




「私を誰だと思っているの?」





< 549 / 653 >

この作品をシェア

pagetop