残念系お嬢様の日常
「抜け出してきたのー?」
そう聞いてきたのは雨宮だった。きっと彼もそうなのだろう。
このゆっるい感じの喋り方……そうだこういうキャラだったなぁ。
「ねえ……じっとしてて」
「へ?」
雨宮の手が私の前髪あたりへと伸びてくる。その行為に驚いて硬直していると、雨宮は「ついてたよ」と桜の花びらを見せてきた。
「……ありがとうございます」
「すごく綺麗な黒髪だよねー。サラサラで艶やか」
この人が何を考えているのかはわからない。漫画の中では女たらしだったよなぁ。
可愛らしい容姿で甘い言葉吐いて、女子にきゃーきゃー言われてたはず。いますぐ距離をとって、この場を立ち去った方がいいかもしれない。
「あ……そうだ」
何かを思いついた様子の雨宮は辺りを見回すと、あるものを拾って見せてきた。
「落ちてたんだ」
それは、桜の枝。花がしっかりとついていて、風で散ったようには見えない。小鳥の仕業かな。