残念系お嬢様の日常
「そう。それで貴女は正体のわからない相手の話にのったのね」
プールに落ちたとき、上から見ていたのもおそらく彼女だろう。
「……あの写真を見たとき、悔しくて……なにも考えられなくなった。私の気持ちなんて貴女にはわからないわ」
私を心底嫌いだと訴えるような瞳。
いったい誰が彼女をここまで煽ったのだろう。まあでも、聞きたいことは聞けた。
「英美李様が私をどう思っていても構わないわ」
「……どうせ言いふらすつもりでしょう」
力なく頭を垂らして俯いている英美李様に、「条件があるわ」と言葉を落とす。
顔を上げた英美李様は不審がっているような表情だった。
「貴方の行いを花ノ姫に報告しない代わりに、今後私や周りの人たちを陥れることを二度としないこと」
「…………どうせもうしたって無駄よ。天花寺様は私の言葉に耳を傾けてなんてくれないもの」
ぽたりと涙が床に弾けた。
本気で天花寺が好きなのだということは伝わってくるけれど、彼女のやり方は間違っている。
「英美李様、私結構怒っているのよ。貴方のせいで蒼が傷ついた」