残念系お嬢様の日常
誤魔化す気がなくなった希乃愛は畳に座ると、壁にもたれかかり脱力した様子で話し出す。
「原作通りに進むのなら、どのみち貴方は嫌われ者だった。だから、私は何もする気はなかったの。それなのに貴方は天花寺様たちから嫌われず、むしろ親しげ。しかも光太郎とも原作よりも友好的だった。予想外なことばかりで困惑したわ」
希乃愛は雨宮に視線を向けて、「貴方のこともね」と乾いた笑みを落とした。
「だから、試してみようかと思ったの。手荒なやり方だったけれど、貴方や周りの人がどんな行動をするのか観察することにした」
「手荒なやり方ってプールの件?」
あのとき私が浅海さんを退学に追い込もうとしているという話をみんなの前で聞こえるようにしたのもわざとだったのね。
そのあと謝ってきたのも演技かと思うと恐ろしい。
「中等部の子たちを使って、浅海奏を追い込んでみるとやっぱり原作の雲類鷲真莉亜とは違っていて、原作ではあんなに嫌っていた浅海奏のことを助けていた。だから、わざと文芸部の冊子のタイトルを告げてみたの。それを読めば、前世持ちなら私も同じだと察するだろうと思ったから」