残念系お嬢様の日常



「最初は好きになんて絶対になりたくないって思ってた。けど……光太郎と過ごしているとどんどん惹かれていって、婚約者である貴方と親しくなっていくのがたまらなく嫌になっていたの」


自分の中にある久世への想いが本物なのか、それともシナリオ通りに作られたものなのかわからなくて不安で苦しかったと希乃愛は顔を歪ませる。


「なんでも持っている貴方が憎かった。学院でも花ノ姫として一目おかれていて、原作とは違って周囲にも好かれている。光太郎は惹かれることがないと思っていたのに、いつの間にか貴方のことばかり話すようになって……悔しかった。私がずっと傍にいたのに!」

「だから、裏で手を回したってこと? それって自分のためだよね。久世光太郎のためじゃない」


目に涙を滲ませた希乃愛が雨宮を睨みつけた。

雨宮は顔色一つ変えずに、咎めるような厳しい眼差しで「勝手だな」と吐き出した。


「君が陥れようとしていたことによって、雲類鷲さんは原作通りに自分が殺されるかもしれない恐怖を抱きながら過ごしていたんだよ」





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