残念系お嬢様の日常
私が初等部五年生で光太郎が六年生のときのことだ。
「希乃愛、誕生日おめでとう」
あからさまに避けていた私に光太郎は嫌な顔をせずに接してくれた。
私の頭を撫でてくれる優しい手。あまり笑わない光太郎は幼馴染の私には笑みを見せてくれる。
「あ、ありがとう……」
「今日は希乃愛の誕生日だから、したいことがあればなんでも言っていいぞ」
「……じゃあ、遊園地に行ってみたい」
人混みが嫌いな光太郎は嫌がるものだと思っていた。
けれど、少し驚いたように目を見開いた後、すぐに笑って頷いた。
「いいよ。行こうか」
「え……いいの?」
「今日は希乃愛が主役だからな」
前世でも、漫画の中の希乃愛も決して主役になれるような人間ではなかった。
自分よりも眩しい人たちがたくさんいて、僻んでばかりだった。
けれど、光太郎は私を見てくれる。大事にしてくれる。
たった一日だけの魔法だとしても、私を主役にしてくれる。