残念系お嬢様の日常
「ほら、行くぞ」
光太郎が私の手を引いて歩き出す。
立ち止まって悩んで、苦しんでいた時間が動きだすような気がした。
一歩、一歩と進むたびに甘く痺れるような感覚が胸に広がっていく。
好きになんてなりたくない。
この気持ちは決められたものかもしれないのに。
それなのに————
「……光太郎」
「どうした?」
ふり返る光太郎と視線が交わる。
彼の優しさを独り占めしたいなんて無謀なことが頭を過った。
彼は私のことを妹としてしか見ていない。
それでも、私を見てほしいなんて————叶わない想いが苦くて、虚しかった。