残念系お嬢様の日常
「え……え!?」
思わず大きな声を上げてしまった。
雨宮と瞳が婚約なんて、原作にはなかったはずだ。
「こ、婚約って本当に?」
「本当だよ。俺の父と、真栄城さんのお父さんが決めたんだ」
淡々として話していて雨宮の感情が見えない。
協力関係だった私は彼と近い距離にいたはずなのに、今はとても遠い存在に思えて壁を感じた。
「譲も真栄城さんも本当にそれでいいの?」
「……悠はそれを聞いてどうしたいの? 決めるのは俺たちじゃないよ」
笑っているのに笑っていない。
胡散臭い笑顔ではなくて、完全に心を見せないようにしている笑顔だ。
「俺、先に戻るよー。なんか空気重たくさせちゃったし。ごめんね」
「おい、譲」
「なに?」
引き止めた桐生を雨宮はどこか冷めた視線で見つめている。
こんな表情、雨宮は桐生たちにしていなかったはずだ。