残念系お嬢様の日常
かなり前に読んだ漫画だけど、大好きで何度も読み返していたから登場人物や展開の一部は覚えている。ドラマ化もアニメ化もしてたし。
原作は高校一年生からスタートする。主人公であるヒロインの浅海奏が特待生として入学してくるのだ。だとしたら、私に残された猶予はどのくらいなのだろう。
「僕らは中等部の二年だよ」
「中等部……」
「どうしたの? 顔色悪いよ」
だって、私殺される。
漫画の中だと雲類鷲 真莉亜は後半あたりで死んでしまうのだ。
あ、あれ?しかも、誰に殺されるんだっけ……ラストの犯人くらい覚えていてもおかしくないはずなのに思い出せない。
真莉亜は死ぬ直前誰かに付け狙われてたんだったよね。それで切りつけられて、階段から落ちて……
「うぁああああぁああ!」
「な、なに!?」
思い出してしまった。
私は最終話を読む前に海で溺れて死んでしまったのだ。もしかして、これは滝川千歩が最終話を読めなかったことを悔いていて、じゃあそんなに読みたいならこの世界で見てこいってこと!?
いやいやいや、真莉亜になったって死ぬから最終話わかんないし。犯人死ぬ直前に見て「あ……あんただったのね」でバッドエンドじゃん! そんなの嫌に決まってる。
「私……」
「大丈夫? 目覚めてから変だよ」
「生きたい」
「うん、姉さんは今生きてるから安心して。ちょっと休もう」
蒼によって強制的にベッドに寝かされて、羽毛布団をかけられる。深いため息を吐いてから、頭ごと中に潜り込み身を縮ませて「なんじゃこりゃー」と叫んでいると心配した蒼に羽毛布団を剥ぎ取られた。
この日、私の人生はハードモードへと切り替わったのだった。