残念系お嬢様の日常
「お前が読んでどうすんだよ」
「いいじゃんいいじゃん。普段は見られない秘密の花園をちょっとくらい知りたいしー」
「でも、困らせてしまうんじゃない?」
私の顔を覗き込んで不安げに声をかけてくださる天花寺様。さすが噂通りのお優しいお方です。
けれど、邪な気持ちが勝ってしまう。ああ、お許しください百合園同好会の皆様。
「あの、その……ダリアの君が見つめているお相手を教えてくださるなら……」
「うん、いいよー」
「では……お読みください」
少し胸が痛むけれど、これも新たな情報提供のためだわ。
「先に教えとくねー。ダリアの君が見つめているのは、多分 雲類鷲 蒼(うるわし あお)だよ」
「えぇ!」
雲類鷲蒼様といえば、お姉様はあの紅薔薇の君だわ! こ、これは一大事ですわ! ダリアの君の想い人があの紅薔薇の君の弟の蒼様!?
「まぁ、恋なのかは知らないけどねー。見つめながら、何かメモ取ってるのは見たことあるよー」
「貴重な情報提供に感謝いたします!」
ついつい鼻息が荒くなってしまう。令嬢としてこれではダメだわ。心を落ち着かせなければ。