残念系お嬢様の日常


「スミレは瞳に心から幸せになってもらわないと嫌なの! 大好きな瞳が泣くのなんて嫌なの! 雨宮譲は嫌なやつじゃないってわかってるけど、それでも瞳が誰のそばにいるのが一番幸せなのかくらいスミレでもわかるわ!!」

いくらスミレが訴えかけても、ハルトさんは顔色一つ変えない。

なにを考えているのか全く見えない人だ。



「スミレ、いったん落ち着いて」

「真莉亜は本当にこれでいいと思ってる? ……気づいていないの?」

「な、なにに?」

「自分の気持ち」

見透かされたような気がして、どきりとした。

本当にこれでいいと思っているのか、そう聞かれれば答えはNOだ。

けれど、感情だけでどうにかなる問題ではないこともわかっている。


「スミレ、誰かを好きになってそれが成就する。現実ではそれは簡単なことじゃないんだよ。叶わない人だってたくさんいる。綺麗なものばかりのキラキラとした少女漫画の世界とは違う」

「それがハルトお兄様の言い訳なのね!」

「……いつからそんなに反抗的になっちゃったんだろうなぁ」

「好きな人に好きと言わない言い訳でしょう。ハルトお兄様はずるいわ。ずっと瞳の気持ちを知っていたのに。それなのに気づかないふりをしていたんだもの」


一眼レフを構えているからハルトさんの表情が見えない。


けれど、動きが一瞬止まった気がした。





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