残念系お嬢様の日常
「雲類鷲さんを見ていれば、もう答えはわかるよ」
心臓がどきりと跳ねる。
自分でも確信には触れないようにしてきた気持ちは、必死に箱の中に仕舞い込んでいた。
けれど、今にも箱の蓋が揺れて溢れ出しそうで手を握りしめてぐっと堪える。
「私は……」
「俺への答えももうわかってる。だから、最後にこれだけは言わせて。雲類鷲さんの気持ちをなかったことにしないで」
指先から少し力が抜けていく。
抑えていた力が緩まり、重たくのしかかっていたものが消えていった。
私の気持ちをなかったことにしない。
それは誰かにとって迷惑なものになるかもしれない。
困らせるだけかもしれない。
……ああ、これじゃあだめね。
ハルトさんに偉そうに言ったくせに。
勝手に相手の気持ちを決めつけて逃げているだけだわ。