残念系お嬢様の日常


雨宮の優しい声音に強張っていた緊張が少しずつ解けていった。

結んだ唇を開いて弱々しく言葉をのせていく。


「あ、その……こ、」

『ん?』

「声が聞きたかったの」

ああ、もっと違う言葉を伝えたかったのに。

上手い言葉がひとつも出てこない。


雨宮の返答が強くて、今度は別の緊張がこみ上げてくる。

呆れられてしまっただろうか。


どうして上手く話せないのだろう。


本当は会って話したい。

婚約の件の話もしたい。


雨宮の本音を聞かせてほしい。


それにしても無反応は怖すぎる。本気で呆れられているのだろうか。


「えっと……あの、もしもし?」

『…………はぁ』

「え、ため息!?」

『……そんなこと言われると今すぐ会いたくなるから困る』





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