残念系お嬢様の日常
「ああ、大丈夫だよ。少し胃の調子が悪くてね」
「まあ、それはお辛いですわね。 あの……これ、よろしければ」
この人も私と同士! 胃痛仲間なのね。
取り出した薬を男の人に手渡す。男の人は不思議そうに薬を見て首を傾げた。
「これは?」
「胃痛薬です。……実は私も胃痛仲間ですわ」
こっそりと告げると、男の人は何故か肩を震わせて笑い出す。
胃が痛すぎて変になってしまったのかしら。
「おもしろいお嬢さんだね」
「え」
「ご令嬢から胃痛薬を渡されたのは初めてだよ」
おかしな人だと思われてしまったようだ。
胃痛仲間がいてつい力になりたくて渡してしまったけれど、有難迷惑だったかしら。
「よくあることだから心配いらないよ。私も薬は常備している」
「そうでしたの。私ったら余計なことをしてしまいましたね。申し訳ございません」
「いや、せっかくだからこれはいただいておくよ。ありがとう。お嬢さん。君のお名前は?」