残念系お嬢様の日常


淡いブルーのシャツと紺色のスーツ姿の景人がお皿を手に取ろうとした私を制した。

彼がこういう場に来るなんて珍しい。


「……てっきり来ないかと思ったわ。あまり人に会いたくないんじゃないの?」

「そろそろ表の方にも戻ってこないとね。拓人にばかり押し付けてしまっていたからさ。それに面白いものが見られるかもしれないし」

「……面白いもの?」

「まあ、水谷川の方は詳しくは教えてくれなかったけど。でも、あいつもなにか企んでるでしょ」

景人の言う通り、スミレはなにやら動いているらしいけれど、私も詳しく教えられていない。

今日行動を起こすことはわかっている。

けれど、当のスミレは特に何もする様子もなく男の人ふたりと一緒にいた。

おそらくあのふたりがスミレの一番上と真ん中のお兄さんだろう。


立食形式のようなので、出席者は入り口で配られたドリンクを片手に各々で談笑している。

学校関係の人はいつものメンバーしかいない。他の出席者の名前はわからないけれど、見覚えのある人はちらほらいた。

きっとパーティーなどで見かけたことがあるのだろう。


先ほどまで私の横にいたはずの蒼は珍しく天花寺と浅海さんと話している。

すると、雨宮もその中に入って談笑しはじめた。この間の電話ぶりだからか気恥ずかしくて視線を逸らしてしまう。




< 627 / 653 >

この作品をシェア

pagetop