残念系お嬢様の日常
「……まあ、個人のことだし好きにすりゃいいけど。譲に婚約者の話なんてまたすぐ持ち上がるんじゃない?」
「その可能性は高いな」
「ぐずぐずしてたら、とられちゃうかもね」
……ギクシャクしていた桐生兄弟が仲良くしているのはいいことだけど、冷ややかな眼差しでチクチクといじめてくるのやめていただきたい。
「紅薔薇は婚約者いないのか?」
「え……っと、いたのですが、破棄したので」
久世が伯母様にも話をしてくれたようだ。
先日伯母様が私が留守の時に血相を変えて家まできたようだけど、お父様が宥めてくれたらしい。
まあ、まだ怒っているだろうから当分は会いたくないけれど。
「破棄されたのか」
「どうして決めつけて憐れむように見てくるのですか! ……まあ、いろいろとあったんです。けど、もう破棄は確定したので」