残念系お嬢様の日常
「浅海くん、瞳。表彰の件、おめでとう!」
「ありがとうございます。雲類鷲さん。……自分が選ばれるとは思っていなかったので、まだ実感わかないです」
控えめに微笑む浅海さんに瞳は「選ばれてもおかしくないよ。学年トップの成績だよ」と声をかける。
ふたりのキラキラオーラが眩しい。浅海さんも髪の毛伸ばしたら可愛いだろうな。
「ふんふんふふーん」
スミレは相変わらず、マイペースで駄菓子を広げ始めた。
それを覗き込んでいる雨宮に「これはこうやって食べるのよ!」と楽しそうに説明をしている。
再びカウンセリングルームのドアが開かれたので、どきりとしたけれど、訪問者はよく知る人物だったのでほっと胸を撫で下ろす。
「蒼、珍しいわね」
「水谷川さんに呼ばれた。干し梅くれるって」
普段は呼んでも顔を見せないのに、干し梅につられてくるとは。
そんなところも可愛い弟だわ。
よし、お姉ちゃんが今度干し梅一箱分注文してお部屋にお届けするサプライズしてあげるわね。
待っていてね、蒼。干し梅パラダイスよ。
「……姉さん、妙なことは考えないでね」
「え?」
「なんか今、企んでいる顔してたから」
どんな顔!?
両手を頬に当てて驚いていると、私たちの会話を聞こえたらく笑っている雨宮が視界に映った。
……ああ、やっぱり偽りのない彼の笑顔が好きだなと実感した。