残念系お嬢様の日常
雪花祭
雪花祭当日は、制服姿の生徒たちは一人もいなかった。
女子はドレスで着飾り、男子はブランド物のスーツを着ている人ばかりだ。
時間帯も夕方なだけあって、学院内ではない別の場所のように感じてしまう。
毎年雪花祭が行なわれているのは、学院内の花館という建物。重厚感のある扉が開かれると、豪華なシャンデリアが宝石のように煌めいた。
その光を浴びるようにいるのは話に花を咲かせている生徒たち。もうかなり人が集まってきているようだ。
「真莉亜!」
名前を呼ばれて振り向くと、淡い紫色のドレス姿のスミレと、雪のように真っ白なドレス姿の瞳がいた。
雪花祭では白を着ていいのは表彰者にだけなので、近くにいた白いスーツ姿の浅海さんのこともすぐに見つけられた。
「さすが紅薔薇だわ。深紅のドレスが似合ってるわね」
「それをいうならスミレもじゃない」
「……これは兄たちが選んだのよ。着なかったら雪花祭に潜入するとか言ってきたの」
スミレのお兄さんたちなら、着ても着なくてもこっそり潜入していそうだけれど、大丈夫かしら。
瞳も同じことを思っていたのか、きょろきょろと辺りを見回していた。
「あれはどなたかしら!?」