残念系お嬢様の日常
「じゃあ、行ってくるね」
「行ってきます」
もうすぐ雪花祭がはじまる。
表彰される白い服を着た人たちが集まりだしていた。
瞳と浅海さんを見送り、改めて会場を見渡すと蒼が少し遅れてやってきたところだった。
ダークブルーのスーツを着ていて、我が弟ながらイケメンすぎてガン見してしまう。
そんな私に気づいた蒼は一瞬訝しげな表情をしたものの、すぐにいつもの表情に戻る。
詮索はやめたらしい。
「姉さん、髪飾り曲がってる」
「え、直して。蒼」
「じっとしてて」
耳元につけている髪飾りを蒼が壊れものに触れるように優しい手つきで直してくれる。
目が合うと、「似合うね」と微笑んでくれた。なんて愛らしい弟!
そういえばあの三人組がいないけれど、きっと会場の中心で囲まれている人たちが彼らだろう。
姿を見なくても、人が多いところが彼らのいる場所だ。とてもわかりやすい。
……雨宮はパートナーはいるのかしら。
きっとたくさん申し込みをされているだろうけれど、どんな対応をしていたのかはわからない。
できれば今日話をしたい。そんなことを考えると一気に緊張して手が汗ばんできた。
「雪花祭、開会式を行います」
司会進行は花ノ姫の三年生たち。
マイクを通して聞こえてくる美声にうっとりとしている女子たちを見て、男子たちはぎょっとしているようだ。
中等部まで男子と離されていて女子校のようなものだったから、私たち女子からすればこの光景はよくあること。