残念系お嬢様の日常
「私はこれからも雨宮に傍にいてもらいたいわ」
「……それはどういう意味?」
「え? そのままの意味よ」
「もっと別の言葉で聞かせてほしいな」
意味がわかり、頬が熱くなってくる。
意地悪く微笑んでいる雨宮は完全に楽しんでいるようだ。
「っ、だから! ……好きってことよ」
「俺も好きだよ」
「……知ってます」
このやりとりが照れくさくて、燃えるように顔が熱い。
雨宮は余裕そうなのが腹立たしいわ。
「顔赤いよ」
「うるさいわねっ!」
「ありがとう。俺を選んでくれて」
繋いでいた手が指を絡め取られていく。
その動作にドキドキとして、雨宮を見上げると、甘ったるい笑みを浮かべて私を見つめている。
「好き」
ほぼ同時に零れ落ちた言葉。
雨宮は身をかがめると、空いた方の手で私の頬に触れてくる。
月明かりに照らされた私たちの影がゆっくりと重なった。