残念系お嬢様の日常
前世のことを思い出した私はまずはノートにまとめてみることにした。
前世の私は、滝川千歩という名前で高校三年生だった。そして、今世の私の世界は前世の私が読んでいた漫画の世界に酷似している。
まずは漫画の中の世界の整理。
『恋にほんの少しのスパイスを』
ヒロインは男装で入学してきた特待生の浅海奏(あさみ かなで)。
男装の理由は確かお兄さんも元花ノ宮学院の特待生で制服があまりにも高かったため、お兄さんの制服のお下がりを着るしかなかったという設定。
少し大きめの制服だが中性的な顔立ちで、ごく一部を除いては彼女を男の子だと信じている。
元々庶民という理由で周りから煙たがられていたヒロインは、ある日とんでもないことをしてしまう。
それが学院の『花ノ姫』と呼ばれている一人である綾小路にスープをぶっかけてしまうのだ。そこから『花ノ姫』を敵に回し、綾小路の取り巻きが一気にヒロインに敵意を向け始めて陰湿なイジメが始まる。
ちなみに『花ノ姫』とは、学院の中で選ばれた優秀な女子生徒にしか与えられない称号。『花ノ姫』になる条件は家柄や外見までも関係しており、望んでいても選ばれるとは限らない。
選ぶのは『花ノ姫』の会長だ。その年の会長に気に入られなければ、いくら家柄や外見が良くても選ばれることはない。