残念系お嬢様の日常


明石さんには今後浅海くんに嫌がらせをしないという約束をして教室で別れ、スミレと瞳と三人で第二茶道室へ向かう。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいい」

「はいはい」

「うわぁああ怒らないでぇええ真莉亜んんん」

「マリアンって誰かしら」

私の腕に巻きつきながら、半泣きで謝罪してくるスミレを見下ろして片方の口角をつりあげる。


「キツそうで怖そうで」

「うっ」

「冗談が通じなさそうに見える……のよね?」

「いやあぁあああジョークです! スミレジョークです! Hey!」

先ほどの可憐な微笑みが嘘のようだ。凄まじい顔だし、おまけに鼻水垂れそう。

瞳がポケットからティッシュを取り出して、スミレに渡してあげている。……お母さんと子どもみたいだ。


「はあ……別に怒っていないわ」

巻きついてきて重いし五月蝿いのでとりあえず怒っていないことを告げると、スミレは目を見開いて嬉しそうに笑った。

腕から離れてくれたので、解放されて一気に歩くのが楽になる。


その隣で瞳が申し訳なさそうに「ややこしくしてごめんね」と謝った。ややこしくしたのはスミレだけです。




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