姉の婚約者
「本当よ!ねぇ、伊沢さん!」

「姉さん、うるさい‼もとはといえば、誰のせいで……」


「……本当ですよ。僕、吸血鬼です。」

ああ、まさか、
深刻そうに言うなよ。私だって、がっかりしちゃうじゃないか……。この人が兄さんでも悪くないなって思い始めてたのに。今までの彼氏では最高値記録してんだよ。

その時、突然に

「私、カエルね。タブンけどワタシがキいたらいけないハナシデショ。」

え?ルディさん‼
こんないいところで帰るの?
ルディさんは席を立って千円札を伝票バサミにバチンと挟み込む。そして、私達3人に笑顔を向け、

「ジャアネー、スグルはまたバイトで」

といい、颯爽と店を出ていった。
嵐のような人だなぁ

聞かれた、よなぁ
気を遣わせた、よね。

「……ルディさんはバイトで知り合ったんですか?」

私の突然の質問にスグルさんは驚いていた。

「ああ、そうだよ…、どうしたの、唐突に?」

「いえ、なんでも
ところで、吸血鬼の話が途中でしたよね。聞いてもいいですよね?」

「あー、うん……、そっかぁ、言っちゃったのかぁ」

なんだか、残念そうだな
吸血鬼がどんなものかはよく知らないが、そうそう隠しおおせておけるようなものではないような気がする。
うちの姉に関して言えば、バカなので気付かないかもしれないけどな。

「そもそもなんですけど、吸血鬼って何なんですか?」

ぶっちゃけ、ジョジョとHELLSINGぐらいしか知らないけどあれであってんのか?
なんとなく、HELLSINGはちょっと違うような気がするし。キモ傘っぽくも見えない。

「あ、私も知りたい」

姉も、しらないのか……
伊沢さんはゆっくり考えてから口を開いた。

「血を飲む鬼だよ」

1行にまとめんじゃねぇ。わかってんだよ、そんなことは!

「そうではなく、こう、具体的に、人間とはどう違うのかとか、もしや、ニンニク食べられないのはそれが原因かなとか、あるじゃないですか?」


「えー、難しいなぁ、自分のことだからねえ、えーと」

井沢さんは自分の事とは思えないほど、しどろもどろに困っている。設定くらい固めてから来いや。

「飲む血はどこから調達してるんですか?」

聞いてみた。すると、妙に納得した顔をして「そうですね」と笑った。それが意外に爽やかな笑顔で、なんか吸血鬼と言い張っている人とは思えない。

「少し、トイレに行ってくるね。」

 そう言って伊沢さんが席を立った時に姉さんに話しかけた。

「吸血鬼ってのは、伊沢さんが言い出した事なんだね。」

「そういったじゃない。でもいつもはもっと強引でかっこいいんだよ。」

「気が弱そうな感じがしたけど?」
「いつもは違うの!もっと引っ張ってくれるタイプなの!」

「そうは見えなかったけど……」

 私は初対面だから気を使っているのか?
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