【短編】記憶の香り
金曜日の夜、俺は静まり返った社内で残った仕事を片付けていた。
普段なら、何のことなく就業時間内に終えることのできる仕事量にもかかわらずに、だ。
毎年この時期になるとどうもやる気が失せる。
窓の外、しとしと降る雨を見ながら3年前のことを思い出しながらそう思った。
遅いペースで仕事を終わらせると、窓の外は雨足が強まると共にすっかりと暗くなっていた。
会社の玄関ドアに鍵をかけ、鞄から折りたたみ傘を取り出し、家路についた。
それから数時間後、俺は会社帰りにたまに寄る駅前のバーにいた。
常連客ばかりで賑わうアットホームな店内。
店はカウボーイでも来店しそうな雰囲気に作られている。
俺は何杯目かも分からないテキーラを注文した。
いつもなら、マスターか仲の良い常連が止めるはずなんだけれども、今日はない。
俺の気持ちを察していたのだろう。
「おごるよ」
マスターや常連客さえ近付けない今日の俺に、誰かが唐突に話しかけてきた。
少しばかり酒ヤケをしたような声ではあるが、確かに女性の声だった。
普段なら、何のことなく就業時間内に終えることのできる仕事量にもかかわらずに、だ。
毎年この時期になるとどうもやる気が失せる。
窓の外、しとしと降る雨を見ながら3年前のことを思い出しながらそう思った。
遅いペースで仕事を終わらせると、窓の外は雨足が強まると共にすっかりと暗くなっていた。
会社の玄関ドアに鍵をかけ、鞄から折りたたみ傘を取り出し、家路についた。
それから数時間後、俺は会社帰りにたまに寄る駅前のバーにいた。
常連客ばかりで賑わうアットホームな店内。
店はカウボーイでも来店しそうな雰囲気に作られている。
俺は何杯目かも分からないテキーラを注文した。
いつもなら、マスターか仲の良い常連が止めるはずなんだけれども、今日はない。
俺の気持ちを察していたのだろう。
「おごるよ」
マスターや常連客さえ近付けない今日の俺に、誰かが唐突に話しかけてきた。
少しばかり酒ヤケをしたような声ではあるが、確かに女性の声だった。