【短編】記憶の香り
 あれは、留学して3ヶ月ぐらい経った時だった。

 街を歩いていると、男にナンパされた。

 後で知ったことだけど、ロンドンで有名なバンド“レッドストロベリー”のヴォーカリストだったのだ。

 あの時、私はどうかしていたのかもしれない。

 いや、そんなのは都合の良い言い訳で、浮気をするなら今しかない!なんて思っていたのかも。

 とにかく、私はその男に誘われるがままにホテルへと入った。

 ホテルを出た私は、ジュンに対する罪悪感でいっぱいだった。

 懺悔(ざんげ)のつもりだったのか、帰りは普段通らない、人通りの悪い道を独りで歩いた。

 誰かにつけられてる感じはしていた。

 その気配を真後ろで感じて、早足になり振り返った時には既に遅かったんだ。

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