3年経ってしまった、消せない話
取り残された少年は、試しに跳躍をする。身体が宙にわずかに浮いた。

しかし飛び方を知らない少年にはそこまでしか出来なかった。

少年は指揮者の様に両手を広げ宙でまた跳躍した。先程よりも高く浮いた。

このような要領で少年はコツを掴もうと必死になった。

しかし飛ぶことにコツなどはなかった。自分の思う飛び方をすれば、飛べたのだから。


ようやく飛ぶ事になれた少年は、空の気持ち良さを知った。

先程まで嫌がっていた翼。しかし今は嫌がることなんて考えもしていない。

空の青さ、空の広さ、飛ぶことの気持ち良さ。

そんな今まで考えた事もないことを考えた。

果てない道を少年は飛びまわり、風と空と一体化した。

一通り飛びまわった少年は近くなった空を見て、

向こうの世界に行けるのではないかと思うようになった。

そして少年は空を昇り出した。何処にあるのだろうか。

空気のない場所にあるのかもしれない。

何処までも果てしなく少年は飛び続ける。

何処まで来たのだろうか、ある地点で突然少年の背の翼は消えた。
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