3年経ってしまった、消せない話
少年は落下を始めた。まるで蝋の翼を失ったイカロスのように。

高度は1000mは軽く超えている。確実に向こうの世界へと楽に行ける高さだ。

落ちるスピードが速くなるにつれ、少年に不安が走り出した。

まだ向こうには行きたくない、と祈った。

しかしそんな少年の祈りもむなしく、落下速度はおさまらない。

少年には絶望しか残らなかった。

間もなくして地と少年の身体が衝突しそうになった。その時だった。

翼を持ったあの少女が少年を抱きかかえた。少年は寸前の所で少女に助けられた。

少年は素直に喜んだ。しかし少女の表情はまたあの時と同じ、涙ぐんでいた。


「また私に翼が戻っていると思ったら…どうして向こうの世界へ行こうとするの?」


少女は聞く。少年は迷わずに言った。


「大切な人に…会えたかもしれないから」


その答えを聞いた少女は更に少年に聞く。


「会えなかったら?どうして結局は怖がったの?」


少年は答える事に躊躇った。暫くの無言が続き、少女がとうとう涙を流した。


「自分も含めて人間は大嫌い」


この言葉から、少女は言いたい事を言い出した。

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