雨が降る 黄昏時と夜のこと
頭がいい小沼くんは家で勉強に追われうっかりしてしまうのか、頻繁に教科書を忘れてくる人で、仕方なく机をくっ付けて教科書を見せてあげながらの授業のあとの休み時間には、教室の何処かから陰口を叩かれた。私に聞こえるように。
気が弱かった私は、痛めつけやすく傷つけやすい。クラスカースト上位のあちらと下位の私では、そういう行為が蔓延していくのにそう時間は要しないと悟った。
四度目、席替えでまた隣の席になり、小沼くんからまた芹沢かよと言われても、小沼くんからのおはようとバイバイに返しただけでも、すれ違うだけでも……もう、何をしても、たとえ小沼くんと関わっていなくても、私の状況は悪くなる一方で。
きっかけなんてもう関係なくなりはじめ……最初は喋ってくれていた友達からも距離を置かれるようになった。
いじめとはそういうもので、私の前は別の子がハブられていて、順番が回ってきただけ。少し我慢すれば。ただの無視と陰口で済んでいる。世の中にはもっと悲惨ないじめがある。
大丈夫だ。少しの間だ――そう、考えて考えて、よく眠らないままに朝目覚めて。顔を洗って学校に行く準備をしながら、けれど吐き気が消えない。
クラス、という括りは、小学生にはあまりにも絶対的世界で、そこでの苦しみは、死に値した。