雨が降る 黄昏時と夜のこと
 
そんな小沼くんに、私はまた、あの顔をさせてしまった。


小学五年生の頃、下校時刻をとうに過ぎた夕方、外は雨が降り夜みたいに暗く、蛍光灯の下、放課後の保健室。泣き出しそうな小沼くん。


「小沼くんのせいじゃないよ」


大人になった私は、あの頃よりも多少は強くなり、自分を取り巻く世の中は教室だけでないことを知った。あの頃とは違うことを言えたのに、目の前にいる小沼くんは、なのに当時と同じ表情をしていた。


「ごめん……芹沢」


うん。まあ、小沼くんは多少自覚はあるものの、自分のその端正な顔立ちや、真っ直ぐいい感じに育った中身が周囲に与える影響について、もう少し気をつけたほうがいいのかもしれないけど。


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