春雷
2017年 始まりと終わり
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一年後。
「柴田さん、失礼しますよ」
「はい」
白衣の女性の影がカーテン越しに近づいてきた。
「高村さん、検査結果がでましたので
報告にきました。
高村さんの血液の数値は安定しました。
術後の体調も安定してますし、順調ですね」
「ありがとうございます。高村先生のおかげです‥」
「いえ。‥‥で、
私に頼ってくるなんて、貴方もヤキが回ったわね。今一番私に会いたくなかったんじゃない?」
女医が話ながら、慣れた手つきで点滴のバッグをチェックする。
「まあね‥‥情け無いけど、やっぱり手術するなら君にお願いしたかったんだ。ありがとう。助かった」
「やあね、大した手術じゃないわよ。ま、酒は控えるのね。‥貴方の奥さんと娘さん、エレベーターですれ違ったわ。フランス、行くのね。貴方、よく許したわね」
「明日、出発なんだ‥‥
もちろん行ってほしくないよ。
何もかも、あいつに全部取られた」
「‥いつ気づいたの?私と紺が姉弟だって」
「あんな美男美女、日本にそうはいないよ。
今はネットでなんでも情報がはいる。
彼のことを調べたら君のことなんて筒抜けさ」
「あら、まあ。貴方は女々しく紺のこと調べたのね。あの子も早く親失くして、親がわりに私が育てたけど、人のもの欲しがってはいけませんなんて教えてなかったわ。
ごめんなさいね」
女医はゆっくりと微笑んで、側の簡易イスに腰掛けた。
一年後。
「柴田さん、失礼しますよ」
「はい」
白衣の女性の影がカーテン越しに近づいてきた。
「高村さん、検査結果がでましたので
報告にきました。
高村さんの血液の数値は安定しました。
術後の体調も安定してますし、順調ですね」
「ありがとうございます。高村先生のおかげです‥」
「いえ。‥‥で、
私に頼ってくるなんて、貴方もヤキが回ったわね。今一番私に会いたくなかったんじゃない?」
女医が話ながら、慣れた手つきで点滴のバッグをチェックする。
「まあね‥‥情け無いけど、やっぱり手術するなら君にお願いしたかったんだ。ありがとう。助かった」
「やあね、大した手術じゃないわよ。ま、酒は控えるのね。‥貴方の奥さんと娘さん、エレベーターですれ違ったわ。フランス、行くのね。貴方、よく許したわね」
「明日、出発なんだ‥‥
もちろん行ってほしくないよ。
何もかも、あいつに全部取られた」
「‥いつ気づいたの?私と紺が姉弟だって」
「あんな美男美女、日本にそうはいないよ。
今はネットでなんでも情報がはいる。
彼のことを調べたら君のことなんて筒抜けさ」
「あら、まあ。貴方は女々しく紺のこと調べたのね。あの子も早く親失くして、親がわりに私が育てたけど、人のもの欲しがってはいけませんなんて教えてなかったわ。
ごめんなさいね」
女医はゆっくりと微笑んで、側の簡易イスに腰掛けた。