春雷
「琴葉さん、本当に来てくれた。僕、泣きそう」

一年ぶりに見れた彼は
目元にたっぷり涙を溜めていた。
大きな瞳にキラキラと輝いている。

愛しくて
思わず両手で、彼の頬を包みこんだ。

「紺さん、やっぱり綺麗ね。私、貴方の顔、大好き。ほんとにすごく綺麗」

愛しくて愛しくて
狂おしいほどに欲しかったものが
今、手の中にあることに感動して
私も泣いてしまいたくなった。

「来たよ、やっと来た。
待っててくれて、ありがとう」



彼は白い歯をみせ、とても美しく笑った。


「ずっと待つつもりだったよ。来てくれるって、信じてた。
だけど、あと一日、待てって言われたら、もう我慢できない。会いたくて狂いそうだった」

「よかった‥同じ気持ちで‥」

唇が近づくか、と、その時、


「あーー!高村せんせーいたんだ!!!」


地図を握りしめた由乃が帰ってきた。
< 108 / 110 >

この作品をシェア

pagetop