春雷
2014年初夏 約束
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五月を迎え、大学構内の桜並木は葉桜へと変わった。
ここ、三階からは新緑の並木道もよく見える。
研究室の窓を開けると、サラサラと葉ずれの音とともに気持ちの良い風が入ってくる。
窓を開けるついでにちらりと向かいの校舎の一階に目が行った。
(いたいた‥)
私は気づいてしまった。
月曜の午前最期の授業、毎週高村紺先生が、そこで授業をしていることを。
(今日も女子に囲まれてますなぁ‥)
授業が終わって、質問でもされてるのだろう。
少し困った顔をしているのが、
女子達の背丈の頭一つ飛び出して、見えた。
コンコン
背後でノックが聞こえた。
「柴田先生〜、失礼します〜」
学部長の長野先生と、村上先生だった。
「柴田先生、これ、実家のお土産です。よかったらどうぞ」
長野女史が、猫の肉球の形をしたクッキーを見せてくれた。
「わ、可愛い!食べるのもったいないですね!わざわざありがとうございます!ご実家、帰省されてたんですか?神戸ですよね?」
箱の中から一ついただくと、いやいやと
三つ渡してくれた。
「僕は先程いただいて、次は柴田先生のところに行くっていうから付いてきちゃいました」
村上先生は相変わらず頭に何かなでつけてグロッシーだ。
その時、
窓の外から女子学生たちの黄色い声が上がった。
「な、何?何?」
三人で窓を覗くと、
それは高村先生のいる教室からだった。
五月を迎え、大学構内の桜並木は葉桜へと変わった。
ここ、三階からは新緑の並木道もよく見える。
研究室の窓を開けると、サラサラと葉ずれの音とともに気持ちの良い風が入ってくる。
窓を開けるついでにちらりと向かいの校舎の一階に目が行った。
(いたいた‥)
私は気づいてしまった。
月曜の午前最期の授業、毎週高村紺先生が、そこで授業をしていることを。
(今日も女子に囲まれてますなぁ‥)
授業が終わって、質問でもされてるのだろう。
少し困った顔をしているのが、
女子達の背丈の頭一つ飛び出して、見えた。
コンコン
背後でノックが聞こえた。
「柴田先生〜、失礼します〜」
学部長の長野先生と、村上先生だった。
「柴田先生、これ、実家のお土産です。よかったらどうぞ」
長野女史が、猫の肉球の形をしたクッキーを見せてくれた。
「わ、可愛い!食べるのもったいないですね!わざわざありがとうございます!ご実家、帰省されてたんですか?神戸ですよね?」
箱の中から一ついただくと、いやいやと
三つ渡してくれた。
「僕は先程いただいて、次は柴田先生のところに行くっていうから付いてきちゃいました」
村上先生は相変わらず頭に何かなでつけてグロッシーだ。
その時、
窓の外から女子学生たちの黄色い声が上がった。
「な、何?何?」
三人で窓を覗くと、
それは高村先生のいる教室からだった。