春雷
帰宅して、やっぱり興奮していた由乃と喜び合い、高校の部活と被らない日をエントリーするつもりだと聞いた。
わいわいと騒いでいる私たちに、夫は
よかったねー、行けたらいいねー、と、話を適当に合わしていた。
お風呂に入って、
パソコンのメールをチェックして、
明日の授業のための準備をして、
布団に入る。
電気を消して
静かに身体を横たらわせ、
ずっと気になっていた疑問と、やっと向き合う時間が来た。
暗闇の中、目が冴えてくる。
(‥どうして‥‥高村先生は私がいることに気づいていたんだろう?)
(‥いつからあの研究室が、私の部屋だと知っていたんだろう?)
聞けない。
絶対に聞けない。
勘違い女とは思われたくない。
だって逆に言えば、
彼からしたら
いつから僕のこと見てたんですか?って、ことじゃないの。
それは恥ずかしい
すっごい恥ずかしい
もう、絶対見ないことにしよう!
情けなさすぎて、気持ちのやり場がなく、
うつ伏せになって、額を何度も枕に打ちつけた。
この感覚、昔の昔、どこかで感じた。
憧れた人への恥じらう気持ちに
似てるな、と、我ながら思う。
憧れや戸惑い、恥じらいなんて
今の私には遠すぎて。
今更なにやってるんだと
笑ってしまった。