春雷


「もう、柴田先生の娘さんもそういう歳なんですか」

「はい。中学卒業したばっかりと思っていたら、もう大学受験とか、考えないといけないんですね‥。あ、りんご召し上がります?」

「嫌やわあ、そんな病人扱いしんといてください」

病室のベッドから起き上がろうとした長野先生を、やんわりと制した。

「簡単な手術だって、聞いてたけど、やっぱりメスが入ると痛いものですねえ‥」

長野先生は、腰の痛みが悪化し、冬休みに入ってから手術入院をした。

いつも綺麗にしておられるのに
さすがに化粧気がない。
それでも紅だけは、長野先生は引いていた。
腰が痛いのに、気を使わせてしまったかもしれない。


「こういう時、私は実の家族じゃないって、水面下にあるものが、浮き彫りに出てくるので、少し悲しいですね‥」

「この時代、そういう家族は沢山いらっしゃるでしょう?柴田先生は、親になるために結婚されたの?それとも、ご主人である方が好きで
結婚を決められたの?」
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