春雷
「実は両方です。
わたし、20代の時から子供ができにくいのは
わかっていたんで、結婚は諦めていました。
一人で生きて行けるために、大学に就職を希望していたんです」
「あら、じゃあ、相手さんに大きな娘さんがいて、突然母親になることに戸惑うことはなかったの?」
「そうですね‥。夫は、友人の紹介で知り合いましたが、娘さんがいることは早々に知っていたんです。初めて会った時は本当に可愛いくて、
私の一目惚れでした」
「ふふふ。まるで、娘さんのために結婚したみたいね」
長野先生は優しく笑った。
私も笑った。
「色々な家族の形がありますでしょう?
受験に向けての気持ちが、ご主人とは違うから、家族らしくないというのはおかしな話ですよ。だけど、そう、ご主人が仰るから、傷ついたのね?」
「そう、ですね‥。傷つきました」
「そんな考えはクソ喰らえね」
長野先生はイタズラっぽく、笑った。