春雷
「もしかして、お医者さんの副業をしている、とか‥?」
(いや、ないない。)
もしかして、妹?
いや、そんなとこについて行く兄なんていないだろう。
夕飯のパスタを茹でながら、
私は悶々としていた。
ミートソースは由乃ちゃんのお気に入りで、
いつも喜んでくれる。
由乃ちゃんの喜ぶ顔を思い浮かべながら
キッチンに立つのに
高村先生の、病院で見た、何か言いたげな顔も思い出していた。
おかげで味がすっかりわからない。
麺の茹で時間も測り忘れていた。
もっとしっかりしたいのに
キッチンで家族の食べる物を作りながら、
家族ではない男性の事に頭を悩ませている
私は何者なんだろう。