春雷

ご馳走様、

そう言って、塾の支度をするために彼女は自室へ足音を荒く立てて、消えた。

「じゃあ、送ってくるわ‥」

私がパスタを半分残して席を立とうとすると、
夫が、ぽつりと呟いた。

「俺ばっかり、悪いの?」

「え‥?」

「いいね。ママは。ユノとお気楽に仲良くやっててさ。俺は仲間外れだな」

「‥お、気楽、か‥」

どうやら夫は、私と由乃ちゃんの関係に不満があるらしい。

「二人とも、俺には何にも話さないし、相談もないよね。いつも話してんのは二人だけだよね」

夫はパスタを黙々と食べながら、ビールで流し込んでいた。美味しくないのだろう。

私は何も答えずに、その場から去ることにした。


(ねぇ、そのパスタ、不味いでしょう?
だって、他の男性のこと考えながら、作ったんだもん)


自室に戻ると、
全てがうまくいかない悲しさで、
涙が滲みでてきた。


「何も相談しないのは‥あなたが何を言っても聞いてないからじゃない‥」


暗闇で、小さく口に出すと、
余計に涙が出てきてしまった‥。


今日は最悪だ。


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