春雷

「あ、柴田先生、ご無事でよかったです!」

何がそんなに嬉しいのか、笑顔で爽やかに出てきた。
バックに、ほかの家々のクリスマスイルミネーションが輝き、彼の笑顔の登場にぴったりだった。

こんな状況じゃなければ、だ。

「無事です!無事です!当たり前じゃないですか!!こんなところまで来て何してんですか!!風邪引きますよ⁈」

いつから待っていたのだろう。
昼間、病院で見た時と同じグリーンのセーターに、ベージュのコート。外で待つには寒すぎた筈だ。

あまりの無計画さと、由乃ちゃんを巻きこんだところに無性に腹が立ち、私の口調は強くなった。

「近所の方もびっくりしますし、ホントこういうことやめてください!一体何しにきたんですかっ⁈」

「申し訳ありません。気に障ったのなら二度としません。だけど、貴女に何かあったらと思うと‥」

寒かったのだろう、鼻の頭が赤くて目がうるんでいる。話すたびに子犬のようにウルウルさせるの、やめてほしい。

「何もありません!何もないですから!心配ご無用です!それに、家で何かあったら、夫が‥」

「何か、あってもパパは助けないだろうねー。
怖がりだし、一番に逃げてるんじゃない?」

横から由乃ちゃんの突っ込みが入った。
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