春雷
「情け無い話ですが、結局彼女を助けることも、支えることもできず、僕は、彼女を、苦しめる存在でしかなかったんです」

「それ、先生のせいじゃないですよ!でも、アイドルと結婚した人ってそういう気持ちなのかなーってちょっと、わかりました」

高村先生の放つ眩い光が余計に暗い影をよびよせるのだろうか。
病院でみた、先生の元奥さんは、素朴な感じの女性だった。
あの様子では、戦闘能力が高そうにも見えない。
嫉妬する女性たちの餌食になったんだろうか。

高村先生が、彼女と普通に幸せに生きていきたいと思っていても周りがほっておいてくれないのは、安易に想像ができた。

悲しい話だ。




「それで、離婚した後もよく会っていたんですか?」

由乃ちゃんの追求は続く。

「いいえ。離婚した後は、一度も会ったことはありません。しかし、先日久しぶりに連絡がありました。結婚を考えている人がいる、とのことでした」

「おおーっ!!!よかったですね!」

「はい。それにより、彼女は前回の流産で、少し子宮を痛めましたので、妊娠が可能なのか気にしていました。それで、僕から検査に同行したいとお願いしたんです。僕からもきちんと彼女に伝えたいことがありましたので」

ドキリとした。
伝えたいこと‥?
何だろう‥


「元奥さんは、無事、だったんですか‥?」

「はい。問題ありませんでした。それを見届けて僕は、僕の生きていく道を決めたかったんです。柴田先生、」

ふいに名前を呼ばれてどきりとした。

「は、はい」




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