春雷

私は観念して、ベッドの側のラグに膝をついた。

「僕が、嫌いになりましたか?」

切ない眼をして、私を見上げる。

心臓の動悸が止まらない。

彼の手も熱くて、こっちまで熱が出そうだ。


「た、高村先生が、何も言わなければ、私、気づかないでいれるんです。知らないふりができるんです‥」

気づいたら、終わる。
全て失う。

「どうして、どうして私なんですか‥?先生の言葉で、私いつも頭の中がぐちゃぐちゃになります」

好きになっちゃいけない。
これ以上この人を想ってはいけない。
この人を思うと、胸が痛みだすのはいつからだっただろう。

彼のだるそうな瞳が、途端にキラキラと輝いた。

「柴田先生!僕、嬉しいですよ。僕のせいで貴女が乱れるなんて、想像するだけでゾクゾ‥ゲホッゲホッ!!!」

「な、な、何言ってんですかあーっ!!!」

やっぱり変だ!この人!
無理!やっぱり無理ー!!!

私は転がるように高村先生からにげだした。
< 80 / 110 >

この作品をシェア

pagetop