春雷
時刻は2時を過ぎていた。
彼がいよいよぐったりとしてきたので、
彼のキッチンを借りて、何か作ることにした。
お米の冷凍がラップしてあったので、
簡単なお粥を作ろうかと考えて準備をする。
気づいたら、お茶碗、コップ、お箸もすべて一人分。
女性の影さえない。
離婚してから、頑なに一人で生きていこうという、硬い決意でもあったのだろうか‥。
「高村先生、お粥、食べれますか?」
寝室を除くと、
彼はすやすやと眠っていた。
額の髪がするりと横に流れて、
全開になった綺麗なおでこが、余計に彼をあどけなく見せる。
「無茶するからよ‥。バカな人‥」
私はそろりと眠っている彼に近づいて、
寝顔を見下ろした。
本当に、
こんなに綺麗で変な人、みたことない。
ベッドの側に座り込み、まじまじと寝顔をみてやった。
「‥デコピンしてやろうかな」