春雷
「琴葉さん‥泣かないで」
突然、名前を呼ばれ、我に帰ると
彼が悲しい笑顔で私を見ていた。
「!起きてたんですか!」
彼の手が伸びて、私の濡れた頬を、優しく拭った。
彼の優しい微笑みと、手の暖かさは、余計に私を悲しくさせた。
「だって‥私じゃ、なかったら、もっと幸せだったはずですよ‥」
彼の手は、私の髪を撫でる。
「恋は、叶うだけが、幸せじゃあないでしょう‥」
「でも、それじゃあ‥」
「僕のせいで、苦しめて、ごめんなさい‥」
違う
違う
もう遅い。
気づいてしまった。
ずっと前から、彼が好きだったと。